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日常の記録。

読書メモ『壊れた脳 生存する知』

読了。感想をザッとメモ書き。

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①あはき学生・介護スタッフとしての感想

学校のリハの先生が「高次脳機能障害がよく分かる本だから」と薦めてくれたから読んでみた。著者は3度の脳出血により脳に障害を負った整形外科の医師である。

 

学校で伝導路や脳の局在などを習い、どこが障害されるとどうなるといったことも習う。先生が実際に臨床で見た患者さんの話をしてくれたり、自分がデイケアで接している利用者さんを思い出して「それは大変そうだ」と想像する。

 

しかしその大変さをリアルに想像するのは容易ではないとこの本を読んで感じた。

 

例えば物と物の距離や境が分からなくなるという話。昔見たトリックアートでは、あたかも立体に見えたものが実は平面だったが、その逆という感覚なんだろうか。階段が蛇腹な面に見えたり、食器の縁の内外の区別がつかなくなったり、いかにも不便そうだった。

 

同じ現実にいながら物の見え方が全く違うというのは、日常的な動作だけでなく人と交流するのも大変なことだろうと思った。身体の障害や物の認識の障害だけでなく記憶の障害もある。ものすごく大変そうだった。

 

大変で、困っているのは当事者である。

 

教科書に書かれたことも知識としてとても大切だが、当事者がどう困っているか、その声を良く聞き、当事者の困りごとが少しでも減るように対応できるようになりたいと思った。

 

バイト先は脳卒中の方以外にも色々な方がいるから高次脳機能障害に限った話ではないが、自分は利用者さん達の声を本当に聞けているのだろうかと、読みながらふと思った。

 

ハッキリ意思表示をしてくれている方もいるが、自分であまり意思表示をしない、できない人も結構いる。時間に追われて、人手不足で手が回らず、望まれない対応をしてしまっていないか。利用者さんを尊重してないつもりはなかったけれど、もっと意識できることはある気がした。

 

②読み物としての感想

もう一つ抱いたのは「どんな時もユーモアが大切」という感想だ。

 

この本は、エッセイとしてとても面白かった。著者の物事の捉え方、表現の仕方が面白くてどんどん読み進められた。決して愉快ではない状況、心身共に大変な状況の中、自身を客観視して、その状況を面白く捉えるセンス。強い方だなと思った。

 

また施設の話になってしまうが、いかに現状を楽しく捉えられるかが生きていく上ですごく大事なことだと介護の仕事をしながらよく思う。私は根がネガティブで、物事を否定的に捉えがちだったが、デイケアで出会った利用者さん達と接していてだいぶポジティブになった。ユーモアや冗談、くだらないことや馬鹿馬鹿しいことがどれだけ元気をくれるか。そういったことを楽しんだ方が人生が楽しくなることを教えてもらっている気がする。

 

身体は心の容れ物だから、身体が不調だと心も不調になりやすい。身体は物理的なものですぐに変えられないこともあるけれど心は身体よりは少し自由な気がする。身体がうまいこといかないなら、せめて心だけでも守りたい。

 

どんな状況でもユーモアや冗談を言える強さを自分も養いたいなと、この本を読んでいて改めて思った。

 

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本当はもっと色々本の内容に踏み込んで書けたらいいんだけど読了直後でまとまらず。脳の機能の回復の話も、人間の可能性をすごく感じられて面白かった。他にも色々あるけど印象的だったことをピックアップして書いてみた。

 

勉強のためではなくて、接する人達のために何度も読んで想像力を養いたい本だった。

 

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たまたま文庫で買っただけだったけど文庫版はいっぱい加筆があってお得だった。

 

漫画にもなってるそうなので、文字だけで読むのがしんどい人には漫画もオススメ。

 

Kindle版もあった。すご。